はじめに

朝の空気がぐっと冷たくなり、街路樹の葉がはらりと色づきはじめる頃。 田んぼの稲刈りも一段落して、あの黄金色の風景もしばしの眠りに入りました。

さて、11月といえば多くの方が思い浮かべるのが、月末の祝日「勤労感謝の日」ではないでしょうか。 でも、この祝日のもともとのルーツが、お米と深く関わる古い宮中行事だということ、ご存じでしたか?

その行事の名前は「新嘗祭(にいなめさい/しんじょうさい)」。 日本人が古来から大切に受け継いできた、収穫への感謝のお祭りです。 今回は、この新嘗祭をきっかけに、日本人とお米、そして"感謝の文化"についてゆっくり考えてみたいと思います。

10月のブログでは新米の選び方や炊き方をご紹介しましたが、 今回はもう一歩踏み込んで、その新米を「いただく」気持ちのルーツを辿る旅。 肩の力を抜いて、お付き合いいただけたら嬉しいです。


稲穂と神棚

新嘗祭ってどんな行事?

新嘗祭とは、その年に収穫された新穀を神々にお供えし、天皇陛下ご自身もそれを召し上がることで、 豊作への感謝と国家の安寧を祈る、宮中で行われる大切な祭祀(さいし)です。
毎年11月23日の夜から翌日にかけて、皇居の神嘉殿(しんかでん)にて厳かに執り行われます。

「新嘗」の「新」は新穀、「嘗」は"舐める=味わう"という意味。 つまり、神様と一緒にその年の新米を味わう——それが新嘗祭の中心なんですね。

千年以上続く、日本でいちばん古い"収穫感謝祭"

新嘗祭の歴史は、なんと飛鳥時代以前にまで遡ると言われています。
『日本書紀』には、すでに新嘗にまつわる記述が登場し、稲作とともに歩んできた日本の文化のなかで、 もっとも古くから続く行事のひとつなのです。

海外には「サンクスギビングデー(感謝祭)」がありますが、日本にはそれをはるかに超える歴史を持つ収穫感謝の文化がある。 そう考えると、なんだかちょっと誇らしい気持ちになりますよね。

「勤労感謝の日」との関係

新嘗祭は戦後の1948年、「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」という主旨の
「勤労感謝の日」として再スタートしました。

祝日名は変わりましたが、宮中では今も毎年11月23日に新嘗祭が厳かに行われています。
つまり、私たちが「明日休みだ〜」と喜ぶこの一日には、 何千年も続いてきたお米と感謝の文化が、静かに息づいているんですね。

新嘗祭の主役は、やっぱり"お米"

新嘗祭でお供えされるのは、その年に収穫された新米と新酒。 日本各地の神社や、皇居に納められるお米は、長い時間をかけて選ばれた特別なものです。

とくに有名なのが、毎年新嘗祭のために献上される「献穀米(けんこくまい)」。
毎年47都道府県のなかから選ばれた農家さんが、丁寧に丁寧にお米を育てて天皇陛下に献上します。
選ばれることは、その地域の誇り。何代にもわたって田んぼを守り続けてきた家族にとって、 これ以上ない名誉なのだそうです。

お米には"八百万の神が宿る"

古来、日本では「一粒のお米には七人の神様が宿る」と言われてきました。
それくらい、お米は神聖で、命を支える尊い存在として大切にされてきたのですね。

「いただきます」「ごちそうさま」という挨拶も、もとはこうした感謝の気持ちから生まれたもの。 毎日のなにげない一杯のごはんにも、こんなにも深い文化の積み重ねがあるんです。

● 全国各地に残る、"地域の新嘗祭"

新嘗祭は宮中だけで行われるものではありません。
全国各地の神社でも、それぞれの形で「新嘗祭」「秋祭り」「収穫祭」が行われています。 境内に新米やお酒、野菜などをお供えして、地域の人々が集まる——。 そんな古き良き光景が、いまも各地で大切に受け継がれています。

お近くの神社の掲示板を見ると、11月下旬の予定に「新嘗祭」と書かれているかもしれませんよ。 ふらりとお参りしてみるのも、秋の素敵な過ごし方です。

● 大嘗祭(だいじょうさい)ってなに?

ニュースなどで耳にしたことがあるかもしれない「大嘗祭」。
これは、新天皇が即位後はじめて行う一世一度の特別な新嘗祭のことを指します。 平成から令和に変わったとき、大嘗祭が大きく報道されたことを覚えている方も多いのではないでしょうか。

普段は静かに執り行われる新嘗祭ですが、その重みは計り知れません。 お米と日本という国のつながりが、いかに深いかを物語る行事といえます。

農家さんが語る、収穫期の気持ち

毎年新嘗祭の時期になると、農家さんからもさまざまな思いがこぼれます。 私たちが取材で伺ったお声をいくつかご紹介しますね。

「無事に新米をお客さんに届けられたとき、ようやく一年が終わったなって肩の力が抜けるんです。」

「先祖代々続いてきた田んぼを、今年も無事に守れた。それだけで本当にありがたい気持ちになります。」

「新嘗祭の日は、家族でその年の新米を炊いて、神棚にお供えしてからいただきます。これだけは欠かしません。」

一年がかりで田んぼと向き合ってきた農家さんにとって、収穫を終えた新米は、まさに我が子のような存在。 その尊い一粒を「ありがとう」と味わう文化が、何千年も前から受け継がれてきたのですね。


新米を神棚に供える

家庭でできる、ささやかな"新嘗祭"

「ちゃんと神社に行かなきゃダメ?」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。 家庭の食卓でも、新嘗祭の精神は十分に取り入れることができます。

1. 新米をいただく日を、ちょっと特別にしてみる

新嘗祭が行われる11月23日。この日のごはんを、いつもよりちょっと丁寧に炊いてみませんか。 炊きたての新米にお漬物、お味噌汁、煮物——。 派手なごちそうでなくても、新米そのものをじっくり味わう一日にすると、心が落ち着きます。

2. 家族で「ありがとう」を伝え合う

農家さんへの感謝、料理を作ってくれた人への感謝、毎日働いてくれる家族への感謝——。 「勤労感謝の日」の本来の意味どおり、お互いに「ありがとう」を伝え合う日にしてみるのも素敵です。

3. 神棚や食卓に、お米をひと盛り

神棚があるご家庭なら、その年の新米を小さなお皿にひと盛りお供えする。 神棚がなくても、食卓の隅にちょこんと置いておくだけでも、収穫への感謝の気持ちは届きます。 ささやかでも続けることに意味がある——そんな日本の暮らしの知恵ですね。

"おいしいお米"の裏側にある、たくさんの見えない仕事

ここまで新嘗祭のお話をしてきましたが、こうして毎年新米をいただけるのは、 農家さんが一年を通して田んぼと真摯に向き合ってきたからこそ。

春の田植え、夏の登熟期、秋の稲刈り——。
どの段階でも欠かせないのが、繊細な「水管理」です。 稲のために水を張ったり抜いたり、水位や水温を細やかに調整したり。 その積み重ねが、私たちの食卓に届く一粒一粒の美味しさを作っているんですね。

● 当社の「水まわりくん」が、農家さんの一年を支えています

毎日の水管理は本当に大変な仕事。圃場が広い農家さんや、高齢の方にとっては大きな負担です。
当社のスマート水管理システム「水まわりくん」は、スマートフォンひとつで田んぼの水位や水温を管理でき、 遠隔で給水・止水もできる頼もしいパートナーです。

「身体がラクになって、来年もまた稲作を続けられそうだよ」
——そんな農家さんの声が、私たちのいちばんのご褒美です。
美味しいお米を未来へ繋いでいくために、これからも現場に寄り添う製品づくりを続けていきます。

最後に

新嘗祭は、何千年も前から続いてきた日本の収穫感謝の文化。 目に見える派手さはなくても、私たちの暮らしの根っこに静かに息づいています。

今年の11月23日、もし時間に余裕があれば、いつもの食卓にちょっとだけ新米を盛ってみてください。 そして、その一粒を口に運ぶときに、田んぼで頑張ってくれた農家さん、お米を実らせてくれた自然、 そして食事を共にする家族や仲間に、心の中で「ありがとう」とつぶやいてみる。

それだけで、何千年も受け継がれてきた感謝の文化に、あなた自身がそっと連なることになります。 難しい儀式は要りません。豪華な準備も要りません。 心に「ありがとう」を一粒、お米と一緒に味わう—— それが、現代の私たちにできる、いちばん素敵な"新嘗祭"なのかもしれません。

次回は11月後半、稲刈りを終えた田んぼの"その後"についてお届けする予定です。
どうぞお楽しみに。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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